"実験心理学が教える人を動かすテクノロジ" B. J. Fogg 著
Captology(computers as persuasive technologies)。この用語を耳にしたのは、十年ぐらい前であろうか。コンピュータによる説得のための、あるいは動機づけのためのテクノロジ... 著者B. J. フォッグが名付けた造語だそうな。コンピュータ設計が、擬人化エージェントという観点から議論され始めたのは、Windows95...
View Article"貧乏人の経済学" Abhijit V. Banerjee, Esther Duflo 著
「貧乏な人々を紋切り型の束に還元しようという衝動は、貧困が存在するのと同じくらい昔からあります。」貧困層に自由を... 人権を... 支援を... 紛争の撲滅を......
View Article"最底辺の10億人" Paul Collier 著
世界銀行は貧困の撲滅を使命とし、IMFは世界経済の安定を使命とする...などというのは本当であろうか?著者ポール・コリアーは、そうした観点から注目してきた経済学者の一人で、アフリカ経済の世界的権威者と目される人物。彼は、世界銀行で開発研究グループディレクターを勤めた経験から、ノーベル賞経済学者ジョセフ・スティグリッツの示唆を受けて最貧国の研究を進めてきた様子を語ってくれる。そして、最底辺の国々が負の...
View Article"民主主義がアフリカ経済を殺す" Paul Collier 著
ポール・コリアー氏をもう一冊。「最底辺の10億人」では基本的人権を問うていた。本書では権力の側を問うている。冷戦終結後、国連をはじめとする国際的圧力は、紛争国家に対して民主主義を広めてきた。それが悪いとは思わない。しかし、最底辺の国々では、民主主義の普及ではなく選挙の普及となった。大統領たちは、政治理念を学ばず、ひたすら選挙での勝利法を学ぶ。その結果、恐怖選挙と化し、腐敗政権に正義のお墨付きまでも与...
View Article"なぜGMは転落したのか" Roger Lowenstein 著
世界一の自動車メーカとして君臨し、アメリカの象徴となったゼネラルモーターズ。会長チャーリー・ウィルソンが国務長官に任命された時、議会で発言したあの言葉が蘇る。「我が国にとって良いことは、GMにとっても良いことであり、その逆もまたしかり。」ところが、2009年、GMはチャプターイレブン(連邦倒産法第11章)の適用を申請する。その凋落ぶりの最大の原因は、利益を喰い潰す企業年金にあったという。しかも、この...
View Article"天才たちの誤算" Roger Lowenstein 著
なぜGMは... に触発されて、ロジャー・ローウェンスタインをもう一冊。実は、十年以上前に一度読んでいる。株式投資の勉強を始めた当時、オプション、デリバティブ、アービトラージ、VaR(Value at...
View Article"リュベンス" Kristin Lohse Belkin 著
「ルーベンス展」の余韻に浸りながら、もう一冊。酔っ払った美術オンチには、名画を読み物としてくれる、このような書はありがたい存在である。尚、ここでは、本書にならってオランダ語発音で「リュベンス」と表記する。ペーテル・パウル・リュベンスは、第一に画家であったが、学者でもあり、絵画や古代彫刻の熱心なコレクターでもあったという。さらに、外交官としてスペインとイギリスの講和にも尽力し、世を去る時には荘園領主に...
View Article"イノベーションのジレンマ" Clayton M. Christensen 著
「自宅で読めるハーバードビジネススクールの精髄!」惚れっぽい酔っ払いは、この宣伝文句にイチコロよ。破壊的技術によって市場に激変が生じると、業界をリードしてきた優良企業はなぜ失敗をするのか?これは、その法則を探求する物語である。大企業の失敗原因でよく耳にする指摘と言えば、慢心、官僚主義、血族経営の疲弊、長期計画の欠乏、近視眼的な投資、能力や資源の配分ミス、あるいは不運などであろう。確かに、そういう企業...
View Article"イノベーションのDNA" C. M. Christensen, J. Dyer, H. Gregersen 著
クレイトン・クリステンセン教授に感銘を受けたので、もう一冊。前記事「イノベーションのジレンマ」では、持続的イノベーションと破壊的イノベーションを区別し、破壊的発想にこそ真の変革の可能性を匂わせてくれた。だが、一般的に、変革、改革、改善と呼ばれる類いのものは、持続的発想からくるものであろう。破壊的発想となると天才的な思考を予感させる。進化論風に言えば、離散的な突然変異にこそ真の進化の道があるとでもして...
View Article"正義論" John Rawls 著
なんとも照れ臭くなるような題材ではあるが、あのサンデル教授が褒めちぎるものだから。800ページの分厚さは、なかなかの白熱ぶり。確かにうまく整理されているが、これを体系化と言うかは知らん。もっともジョン・ロールズ自身は、ここに示す見解に独創性がないことを認めている。謙遜もあろうが...「ロック、ルソー、カントに代表される社会契約の伝統的理論を一般化し、抽象度の程度を高めること、私が企ててきたのはこれで...
View Article"国富論(上/下)" Adam Smith 著
正直言って、経済学は最も嫌いな学問に属す。しかし、独立するからには無視できない。株式会社というものを理解するには株式市場に参加するのが手っ取り早いと考えたりもしたが、学問の本線ではなさそうである。結局、値動きに惑わされ、夜な夜なファンダメンタルズに執着する始末。人間が金の前で盲目になるというのは本当らしい。十年以上経験して、ようやく長期投資が安定軌道に乗り、ストレスがなくなった。いや、鈍感になったの...
View Article"国家(上/下)" プラトン 著
プラトンの対話篇を読んでいると、いつも思うことがある。それは、独創的な記述とはどういうものか?といったことである。自ら編み出した思考プロセスだと自信を持っていても、古典を読む度に似たような思考に出会う。一瞬がっかりさせられるものの、その出会いが妙に心地良く、たまらない...あらゆる学問において、偉大な哲学書群を基に分析を進めながら、いかにも進化を遂げているかのように見せる。しかし、いくら体系化やら形...
View Article"法律(上/下)" プラトン 著
著作「国家」では、国の在り方についての理念が論じられた。ここでは、法や制度についての立法の在り方が論じられる。理論を裏付けるものは実践である。人間精神や人間社会ってやつは、試行実験によってのみ育まれるであろう。まずは具体的に行動を起こすことだ。真理への道は険しく、たとえ永遠に到達できないと認めつつも...著作「法律」は、「第七書簡」、「第八書簡」と並んで、最晩年の作品と推測されるそうな。プラトンは、...
View Article"政治学"アリストテレス 著
アリストテレスの「政治学」はいろんな翻訳版があって目移りするが、絶版中も多い。ちと高いが、西洋古典叢書版(牛田徳子訳)を試す...プラトンが対話篇にこだわったのは、思考プロセスを重んじたからであろう。科学者の多くにプラトン贔屓が見られるのもうなずける。その分、文学的で冗長的ではあるのだけど。対して、アリストテレスの記述は、演繹的で、学術的にも洗練され、政治学者の多くはこちらの方を好むようである。世評...
View Article"法の精神(上/中/下)" Charles-Louis de Montesquieu 著
三権分立論で知られるモンテスキュー。その著書「法の精神」は、アメリカ独立宣言やフランス人権宣言に多大な影響を与え、いまや近代政治の骨格となっている。しかし、それだけなら興味を持つことはなかっただろう。なにしろ説教じみた話は嫌いなのだ。注目したいのは、様々な政体や法律が風土と深く関わることを論じ、社会学や歴史学の領域に踏み込んでいる点である。そこには、慣習法が成文法となりうるための自然条件が語られてい...
View Article"臨床医学の誕生" Michel Foucault 著
「狂気の歴史」では、非理性から理性の道を解き明かそうとした。「臨床医学の誕生」では、死から生の道を見出そうとする。それは、「解剖 =...
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