"錯覚の科学 - あなたの脳が大ウソをつく" Christopher Chabris & Daniel Simons 著
ノーベル賞のパロディ版に、イグノーベル賞ってやつがある。格調高き研究を対象とする本家に対し、庶民感覚で笑わせながらも、どこか考えさせられる... そんな研究を対象とし、科学する達人たちの遊び心を垣間見ることのできる賞だ。品がない... 不名誉な... といった意味を持つ形容詞 "ignoble"にひっかけたネーミングもなかなか。ちなみに、受賞者の発表は、エイプリルフールにやると洒落ているのでは......
View Article"πと微積分の23話"寺澤順 著
πと言えば、円周率。こいつが、どんな値になるか、古代人は正確には知り得なかったであろう。無理数だから無理もない。だが、数直線上で、直径 1 の円を転がせば、その周の長さが 3 より、ちょいと大きいぐらいは小学生でも分かる。三千年記を迎えた今日でも、πに魅せられる人は少なくない。何万桁も暗唱して、ギネスに挑戦する人たちまで。スパコンで計算中とはいえ、その精度となると、IEEE754...
View Article"Beautiful Data" Toby Segaran & Jeff Hammerbacher 編
こいつを入手したのは、十年ぐらい前になろうか...買ったはいいが、それで満足しちまう。そんな専門書どもが本棚の片隅で、たむろしてやがる。シリーズものではコレクションしておきたものもある。それで、もったいない病が疼けば、しゃあない...オライリー君のビューティフル・シリーズでは、まずコードに誘われ、アーキテクチャ、セキュリティときて、そして今、データに手を出す。コードには、それこそ美しいものがあり、コ...
View Article"Beautiful Visualization" Julie Steele & Noah Iliinsky 編
シリーズものでは、コレクションしておきたものがある。それで読まれず、書棚の片隅で専門書どもが愚痴ってりゃ、しゃあない...オライリー君のビューティフル・シリーズでは、まずコードに誘われ、アーキテクチャ、セキュリティ、データとくれば、データの続編がビジュアライゼーション。こうして外観していると、「美しい」という表現もなかなか手ごわい。主観的な像として現れるだけに、さらに手ごわい。見た目だけでなく、構造...
View Article"分裂病と人類"中井久夫 著
どんよりした薄曇りの中、いつもの古本屋をぶらり。すると、冒頭の一文に目が留まる。「分裂病...」の部分を薄っすら曇らせると、あらゆる場面で教訓となりそうな...「これは分裂病問題へのきわめて間接的なアプローチにすぎない。しかしこのような巨視的観点から眺め直してみることも時には必要ではあるまいか...」本書は、人間が本質的に抱えてきた分裂病を、歴史事象に照らして物語ってくれる。それは、思考や言語、知覚...
View Article"精神科治療の覚書"中井久夫 著
精神病棟をイメージさせるものに、鉄格子の窓や施錠された扉といったものがある。正気と狂気の境界として。それは、異常者を隔離するためのものか。それとも、純真な心の持ち主を保護するためのものか。そして、自分はどちらの側にいるのか...精神病とは、どんな病を言うのであろう。一般的には、心の病と認知されている。心とは、なんであろう。漱石の「こころ」を読めば、それが傷つきやすいものということは分かる。しかし、心...
View Article"天才の精神病理 - 科学的創造の秘密"飯田真 &中井久夫 著
精神病理学の応用領域に、「病跡学(Pathographie)」というのがあるそうな。"Pathographie"という語は、精神医学者メビウスによって編み出され、天才人の精神医学的伝記という意味が込められているとか。当初、芸術家や思想家が研究対象とされ、科学者はあまり注目されなかったらしい。芸術家や思想家の天才ぶりは独特な個性によるもので、それは極めて主観的であり、精神性の研究にもってこい。対して科...
View Article"プロレゴメナ" Immanuel Kant 著
"Prolegomena"とは、ギリシア語で序論を意味し、正確な表題は「およそ学として現われ得る限りの将来の形而上学のためのプロレゴメナ(序論)」となるらしい。ここに、批判哲学の建築スケッチを見る思い。哲学の建設には自省がつきもの。自省の建築には自己否定がつきもの。批判哲学の建築に、健全な懐疑心なくして成り立つまい。自己否定に陥っても尚、愉快になれるなら真理の力は偉大である...尚、篠田英雄訳版(岩...
View Article"啓蒙とは何か 他四篇" Immanuel Kant 著
昔からそうなのだが、おいらには「啓蒙」という用語が、イマイチしっくりこない。押し売りの類いか。宣教と何か違うのか。そんな眼で見ちまう。天邪鬼にも困ったものだ。辞書を引くと、「人々に正しい知識を与え、合理的な考え方をするよう教え導くこと...」とある。「啓」は、開く、教え導く... といった意。「蒙」は、暗い、愚か、無知... といった意。よって、愚か者を導くといった意味になりそうな......
View Article"スモール・イズ・ビューティフル" Ernst Friedrich Schumacher 著
「人間は小さいものである。だからこそ、小さいことはすばらしい...」八年ぐらい前になろうか、原題 "Small is...
View Article"市民政府論" John Locke 著
右と左に二極化する現代社会において、右往左往する大衆を前に、自由主義や民主主義の在り方を問う。多数派に委ねられる民主政治は、市民の大多数が愚かだと、愚かな政治家どもがのさばり、衆愚政治と化す。アリストテレスは民主制を最悪な政治システムと酷評したが、それも頷けよう。それでも、君主がことごとく僭主となることを顧みれば、独裁制よりはマシか...市民社会を支える上で、いまや欠かせない自由主義と民主主義は双子...
View Article"ローマ帝国衰亡史 新訳" Edward Gibbon 著
「すべての道はローマに通ず」という古い格言があるが、三千年紀が幕を開けても尚、色褪せるどころか輝きを増してやがる。「ローマは一日にして成らず」というのもそうだが、本書に限っては、軽妙な文章に乗せられ、一日で読み干しちまった。なんて、もったいないことを...ローマ帝国史といえば、エドワード・ギボンの名を耳にする。だが、彼の著作「ローマ帝国衰亡史」はいかんせん大作で、ToDo...
View Article"ギボン自伝" Edward Gibbon 著
自伝を書くには、勇気がいる。自我を客観の天秤にかけ、冷静でいられるはずもない。見栄っ張りにもなろう。独り善がりにもなろう。人生の回想録は、自分自身への言い訳にもなる。歴史家ともなれば真実を信条とするだけに、政治家や文芸家が書くのとは、ちと意味が違う。記憶ではなく、情報に基づいて記述すべし!と表明したところで、空想上のアダムのように自我を完璧な姿に仕立て上げる。健全な懐疑主義を保つには、自己検証を怠る...
View Article"声と現象" Jacques Derrida 著
声を中心に据えた哲学とは、如何なるものであろう...どうやら現象学の視点から論じたものらしい。現象といっても物理現象とは、ちと違う。それは、極めて主観的な感覚に発するもの。人間の知覚能力は、その対象が客観的で物理的な存在と一致すれば、明らかな現存を認識できるが、その一方で、空想や幻想、あるいは錯覚までもリアルな意識にしちまう特性がある。しかも、この特性が、自我と結びついてしまうと、眠っていた誇大妄想...
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