"ピタゴラスの定理" Eli Maor 著
いまさら感のあるピタゴラスだが、あらゆる建築術の礎がここにあることに変わりはない。定理そのものの美しさは誰もが認めるところであろう。ただ、あくまでも直角三角形という特殊ケースを扱ったに過ぎない。ところが、ちょいと変形してみると、何かの呪縛から解き放たれるかのように拡張性を発揮しやがる。三平方の定理や斜辺定理、はたまた鉤股弦の法など様々な呼び名があるように、内包される意味や解釈はいまだ広がりを見せる。...
View Article"数について" Richard Dedekind 著
かつて、数(かず)というものに対して、ここまで率直に考えさせられたことがあったであろうか?その最も単純な概念は、「より大きい、より小さい」という関係で言い尽くせる。リヒャルト・デーデキントは、有理数の最も重要な性質をこう述べる。「順序よく整った集合体で、二つの相反する向きに無限に延びた一次元の領域を作っていること。」そして、「切断」の概念を用いて数の連続性を規定し、無理数の正体に迫ろうとする。連続性...
View Article"Coders at Work" Peter Seibel 著
この手の書は、なにやら忘れかけているものを思い出させてくれるような気がする。それは、好奇心や探究心といったものだ。同時に、むか~しの愚痴も甦るけど...人は皆、面倒臭がり屋である反面、純粋な好奇心に対しては真摯になれる面がある。そして、探究心の持続こそが才能を覚醒させるのであろう。本書は、ピーター・サイベルが、いまや伝説となった15人のプログラマからコード哲学を聞き出すインタビュー集である。尚、サイ...
View Article"ガベージコレクションのアルゴリズムと実装"中村成洋/相川光 著 竹内郁雄 監修
プログラムが深刻な問題を抱える時、動的メモリの管理に関するものが多い。メモリ系のバグが厄介なのは、バグが埋め込まれる箇所と、それが顕在化するタイミングが大きくズレていることにある。かつて、必要なデータ領域の確保と解放の問題は、プログラマの責任とされた。今でも、そうなんだろうけど...整数型や文字型などプリミティブなデータ型を扱う分には、それほど目くじらを立てることもあるまい。だが、大量のデータ領域、...
View Article"連分数のふしぎ"木村俊一 著
ピタゴラス教団は、整数では表せない数を忌み嫌い、隠蔽工作に走った。「万物は数である」を崇拝する者たちにとって、無理数は宇宙の理性に反する存在だったのである。自然数を分母と分子に配置する表記法に限界を感じるのは、現代人とて大して変わるまい。実際、あらゆるデジタルシステムは実数演算を近似値で誤魔化している。浮動小数点演算で答えが合わないと騒ぐ新人君を見かければ、IEEE754の意義を匂わせてやればいい。...
View Article"数学と論理をめぐる不思議な冒険" Joseph Mazur 著
数学を小説のように読ませてくれる書とは、こういうものを言うのであろうか。そこには、タレスやピュタゴラスによって始まった幾何的思考から、カントールやゲーデルを苛ませた無限の概念に至るまでの論理思考の旅物語がある。幾何的思考の根源は、精神空間を物理空間に投影しようという試みから始まった。そこに代数的思考、すなわち記号が融合すると、アレフという別世界が開ける。「万物は数である」という信仰が崇められ、数学が...
View Article開封の儀を執り行う... Surface Pro3
十年前のノートPCを、誤魔化し、誤魔化し... もう我慢できん。ついに衝動買いに走る。モノは「Core i5 + 128GB SSD + 4GB RAM」搭載モデル。思い切って Core i7...
View ArticleSurface Pro3 から見た Win8.1
Win8.1 は、全般的に大雑把な行動パターンには向いていそうである。視覚的にも分かりやく、そんなに悪くない。既に、Win7...
View ArticleSurface Pro3 とISPのモデム(NETGEAR CG3000D)をWiFi接続
おもちゃの噂を嗅ぎつけたお客人が、見物にやってきた...さて、仕事場(= 自宅)には無線系統が二つある。普段はルータ(Yamaha RT107e)にぶら下げたアクセスポイント(NEC Aterm WG300HP)を利用し、プロバイダ(Jcomさん)が提供するモデム(NETGEAR...
View Article"種の起原(上/下)" Charles Darwin 著
生物学に触れるのに、進化論を避けて通るわけにはいかない。ただ、科学の中でも極めて社会学的な印象が強く、遠ざけてきたところがある。自然淘汰説では、自由放任や市場原理と結びつけて、弱肉強食と重ねる経済学者も少なくない。それでも、科学者から芸術家に至るまで実に幅広い分野でダーウィンを称賛する声を耳にするし、遺伝子工学が量子力学と深くかかわる様子から徐々に興味を惹き、いつかはダーウィン!と意気込んでいた。案...
View Article"動物の心臓ならびに血液の運動に関する解剖学的研究" William Harvey 著
医師ウィリアム・ハーヴェイは、ガリレオやデカルトの時代を生き、解剖学で尊敬を集めた人物だそうな。ジェームズ1世やチャールズ1世の侍医だったというが、一般的にはあまり知られていないようである。ハーヴェイ贔屓の人々によると、目立たぬように振る舞うことで悦びを感じるような人物だったとか。真理を語る者にとっては、目立つと災いの降りかかる時代。科学的観点はことごとく宗教論争に巻き込まれ、案の定、ガリレオは宗教...
View Article"社会契約論" Jean-Jacques Rousseau 著
おいらは、説教じみた話が嫌いだ。ルソーといえば教育者の印象が強く、避けてきたところがある。ただ、モンテスキュー思想に批判的な立場であることを知ると、ちと興味がわく。おまけに、モンテスキューの「法の精神」は禁書目録に加えられ、ルソーの主著「エミール」もまた禁書に指定された。それだけで反社会分子には、ルソーを読む理由となる。彼はこう釘を刺す、「注意を払おうとしない読者にわからせる方法を、わたしは知らない...
View Article"人間不平等起原論" Jean-Jacques Rousseau 著
プラトンは、イデアという精神の原型のような存在を唱えた。ルソーは、かつて人間は自己保存という欲求の元で、ほとんど不平等のない自然状態にあったと説く。だが、社会進歩の過程で堕落し、人間の根源的な状態を忘れ、ついに「徳なき名誉、知恵なき理性、幸福なき快楽」だけを求めるようになったと嘆く。そして、二つの不平等を定義する。一つは、自然的、身体的不平等。二つは、約束に依存する社会的、政治的不平等。本書の主題は...
View Article"完訳 統治二論" John Locke 著
ジョン・ロックといえば、個人的には哲学者の印象が強い。「悟性論」の影響であろう。だが、政治や経済の書では、政治学者と紹介されることが多く、本書にもそんな香りがする。似たような印象に、アダム・スミスのものがある。世間では経済学者と呼ばれるが、「国富論」に触れてみると、そんな狭量な人物でないことが伺える。彼らには、政治学や経済学といった枠組みで人間社会を観察しようなどという意識はなさそうである。ロックは...
View Article"ビジネスは人なり 投資は価値なり" Roger Lowenstein 著
これは、ウォーレン・バフェットの半生を綴った物語である。彼は、金融危機が生じれば政府ですら泣きつくという構図があるほど有名な投資家で、支配下の投資持株会社バークシャー・ハサウェイは世界最大を誇る。その投資人生は、コロンビア大学で教鞭をとるベンジャミン・グレアムとの出会いに始まる。バフェットは、グレアムの唱えたバリュー投資論を信望し、彼の著書「賢明なる投資家」を最高の書と語る。「グレアムを知らずに投資...
View Article"FREE" Chris Anderson 著
なぜ、最も人気のあるコンテンツを無料にしても商売が成り立つのか?あらゆる価値が貨幣換算される時代では、フリーとは無を意味するはず。フリーを巡っての論争は、間違った状態とするか、自明な結果とするかで二分されてきた。無から有を生み出す概念だけに、誤解されやすく、恐れられもする。だが、いまやフリーは当たり前と考える方が優勢であろうか。著作「ロングテール」で名を馳せたクリス・アンダーソンは、この得体の知れな...
View Article"人月の神話" Frederick P. Brooks, Jr. 著
コンピューティングの世界は日進月歩。チューリングマシンが考案されて一世紀に満たず、いまだ過渡期にあるのだろう。ここに、出版後20年経っても色褪せない書がある。プロジェクトの事情はあまり変わっていないようだ...「人月」という用語は、開発、設計、製造などあらゆる生産工程において用いられる。それは、人と月の積で表される工数の単位で、二つの項が互いに交換できるという意味がある。人と月が交換可能となるのは、...
View Article